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子どもの泌尿器科

子どもの泌尿器科とは

泌尿器の病気は大人だけでなく子どもにも起きる可能性があります。男の子のお母さんや女の子のお父さんは、子供の性器に異常があるかどうかを判断するのが難しいこともあるでしょう。子供は自身の症状をうまく伝えられないことがあるため、オシッコを嫌がるなどの不審な行動が見られる場合は、積極的に医師に相談することが大切です。

学校の健康診断の検尿で異常を指摘されたら

腎臓は主に血液中の老廃物を排除し、尿を生成する役割を担っています。尿が作られる最初のプロセスは、血液のろ過です。糸球体と呼ばれる部位で血液がろ過されるのですが、糸球体に異常が生じると血液やたんぱく質が断続的に尿に漏れる恐れがあります。

糸球体腎炎の原因や基礎疾患によっては専門的な検査が必要な場合もあるため、尿に関する症状がみられた際は早めにご相談ください。

小児泌尿器科

下記のような症状がみられた場合は、当院までご相談ください。

男の子の症状

女の子の症状

小児泌尿器科の症状別疾患

尿失禁・オムツが取れない

子どもの膀胱は尿がたまって尿意を感じると自動的に収縮します。本人の意思で制御することができません。子どもの知能の発達に伴い、通常は5歳までに排尿をコントロールできるようになります。ただし、この排尿機能の発達には個人差があり、早くて3歳ごろ、遅くて8歳を過ぎても完成しないことがあります。

もし、就学年齢になっても昼間におもらしをする場合、それは疾患のサインかもしれません。二分脊椎症や神経因性膀胱など、神経系や脊椎に関連する疾患の可能性も考慮すべきため、早めに専門医に相談することをおすすめします。

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夜尿症(おねしょ)

夜尿症は、5歳以上の子供で1ヶ月に1回以上の頻度で夜間の睡眠中に尿失禁が続く状態を指します。7歳児の夜尿症は約10%の割合で見られますが、成長に伴い自然治癒し、成人までにほとんどのケースが完治すると言われています。また、男の子に多く見られる傾向があります。

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夜尿症の原因は主に次の3つに分類されますがどれが原因なのか特定できないこともよくあります。

夜間多尿

通常、一晩の間に排尿する尿量は約200cc以下ですが、夜間多尿型の子供はこれを上回る250cc以上の尿量が出ます。これにより、膀胱の容量を超えてしまい、夜間にお漏らしをしてしまうことがあります。子供が夜間に大量の水分を摂取している場合、尿量が増加して夜間多尿の原因となることがあるため確認しましょう。排尿日誌をつけて24時間の排尿回数と毎回の排尿時刻と排尿量をチェックすることで排尿状況を把握することができます。

また、夜間に分泌される抗利尿ホルモンは、尿を濃縮して尿量を減少させる役割を果たします。このホルモンの低下が夜間多尿を引き起こす原因となることがあります。起床時の尿比重(浸透圧)が低い場合には抗利尿ホルモンの分泌低下の可能性を考えます。

膀胱容量の減少

夜間の尿量は正常ですが、膀胱の容量が小さく、尿を溜める能力が低い状態を指します。これにより、尿が膀胱に収まり切らず、夜間にお漏らしを引き起こすことがあります。膀胱容量の減少の原因は、膀胱を収縮させる筋肉が過度に活発になることです。小児の膀胱機能は未熟な乳児期を経て、幼児期に徐々に成熟していきますが、膀胱機能が未熟なことにより夜尿をひきおこすことがあります。夜尿を起こす児には夜間に不随意の膀胱収縮(排尿の筋肉が勝手に収縮してしまう)がおきたり、膀胱容量が低下したりすると言われています。

また、下部尿路感染症によって膀胱の炎症や刺激が生じ、排尿時に痛みを感じることがあります。これが膀胱容量の減少につながる可能性も考えられます。さらに、二分脊椎や脊髄に存在する腫瘍が神経に圧迫をかけ、膀胱の正常な機能に影響を及ぼすこともあります。

覚醒障害

睡眠覚醒障害は、夜間に尿意を感じながらも、それに気付くことなく睡眠が続いてしまう状態を指します。この症状により、夜間にお漏らしをしてしまうことがあります。睡眠が深すぎるというわけではなく、深睡眠から浅睡眠を経て覚醒するという流れがうまくいかず、覚醒する前に浅睡眠で排尿したり、深睡眠のままで排尿したりすることがあります。睡眠覚醒障害は神経系の異常に関連していることがあり、適切な評価と治療が必要です。

夜尿症の診察

身体の診察のほか、排尿回数や排尿量、失禁や切迫感などを記録する排尿日誌の作成、飲水量の記録の作成などを経て、夜尿症を診断します。1週間に何回もらすのか、漏らす時刻はいつか、そのほかには冷え症、たちくらみの有無、便秘はないか、学校の成績や本人の性格はどうか、親子や友人関係、ストレスはないかなどを確認します。また、尿検査で感染症にかかっていないかどうかの確認や、超音波検査で残尿量の測定なども行います。

夜尿症の治療

夜間お漏らしの改善を図るために、以下の生活指導を行います。

  1. 寝ているのを起こさないこと、怒らない・叱らないこと:
  2. 夕方からの飲水量を控えること:就寝前3時間は水分を摂らない
  3. 膀胱に尿を溜められるよう少しずつ我慢すること

また、夜間多尿型の場合、夜寝る前に抗利尿ホルモンを補充する治療を行うことがあります。膀胱容量の減少が原因の夜間のお漏らしに対しては、抗コリン薬を使用して尿を膀胱に溜めることをサポートする治療を検討します。

尿路感染症

尿路感染症

小児の尿路感染は女子の方が男子よりも多く女子の3%、男子の1%に発生するとされています。小児の場合には成人と違い原因となる基礎疾患があることが多いです(5-7割程度)。具体的には膀胱尿管逆流(VUR)、水腎症、重複尿管、神経因性膀胱、甲部尿道弁などがあります。起炎菌のほとんどは大腸菌で、細菌が尿道口から尿路に侵入し、膀胱内の粘膜に感染と炎症を引き起こした状態になります。頻尿、排尿時の痛み、尿失禁、腹痛、発熱などの症状が見られます。特に発熱が伴う場合、感染が進行し腎盂腎炎に進展する可能性があります。このような症状が現れた場合、医療機関での診察と治療が必要です。採尿検査のほか、超音波検査やCT検査などが行われ、腎盂や尿路の構造を評価します。

一般的な治療として、抗生物質の投与によって改善が期待できます。膀胱尿管逆流(VUR)が原因で尿路感染を起こしている場合にはVURの程度を評価する必要があります。膀胱尿管移行部の解剖学的な異常(膀胱壁内尿管が短く逆流しやすい構造)をしており、細菌感染した尿が腎臓まで逆流することにより腎盂腎炎や敗血症を起こしやすくなります。また逆流の程度が強い場合には水腎症となり長期にわたると腎臓が萎縮してしまうため慎重な経過フォローが必要です。重複尿管といって尿管が2本ある場合もVURを起こしやすいためエコーで腎臓の形態を確認する必要があります。
(重複尿管の図、水腎症の図)
基本的な治療法は抗生剤による保存的な治療になりますが、水腎症の程度が強い場合や腎機能が低下する場合、尿路感染を繰り返す場合には手術が必要になることもあります。

尿路感染症

腎盂尿管移行部狭窄症

腎盂尿管移行部狭窄症は、腎盂と尿管の移行部が狭く、尿の流れに障害を引き起こした状態です。この狭窄部分が先天的なものである場合、自然に症状が軽減する可能性があります。尿の流れが阻害されると腎盂内の圧力が上昇し、腎盂が拡張します。これにより、水腎症という状態となり、腹部の痛み、嘔吐、発熱などの症状が現れることがあります。

また、長期間にわたる狭窄により腎機能障害が発生することもあり、定期的なフォローアップが必要です。治療では、狭窄部位の状態や症状の程度によっては手術を行います。

診断

乳児期の水腎症のほとんどは腎盂尿管移行部狭窄症とされています。尿路感染症や腎機能障害の兆候がある場合、症状が腎盂尿管移行部狭窄症に関連しているかどうかを確認するために尿検査や採血検査を行います。また、超音波検査を使用して水腎症の程度を評価します。症状が進行している場合や高度な水腎症が疑われる場合、利尿レノグラム検査(核医学検査)を行い、尿路通過障害の程度や両側の腎臓の機能の差などを評価します。

治療

水腎症の治療にはいくつかのアプローチがありますが、基本的には以下の場合は手術を行います。

  • 腹痛や発熱などの症状が頻繁に現れる場合
  • 自然治癒せず、腎機能の低下が見られる場合

手術治療の1つは腎盂形成術です。この手術では、狭くなっている尿管部分を切除し、腎盂と尿管を縫い合わせて正常な尿路の通り道を再建します。乳幼児には小さな切開(約3〜4cm程度)
手術を行い、学童期以降の子供には身体への負担が少ないロボット支援下または腹腔鏡下での手術を行います。

包茎

包茎は男性の性器の状態で、包皮口が狭く、亀頭が完全に露出しづらい状態を指します。包茎には主に真性包茎と仮性包茎の2つの種類があります。真性包茎は包皮を全く剥くことができず、仮性包茎は剥けるものの正常時は亀頭を被っている状態です。

包茎自体が病気ではなく、生まれたばかりの赤ちゃんは通常包茎の状態です。しかし、子供の包茎が問題となる場合もあります。例えば、尿が飛び散る、包皮が膨らむ、包皮の炎症が繰り返すなどの症状がある場合は、泌尿器科を受診することが推奨されます。

包茎の治療には包皮切除手術(包茎手術)などがあり、症状や希望に応じて適切な方法を選びます。

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亀頭包皮炎

男の子の性器は基本的に包茎の状態であり、この包皮と亀頭の間には垢や汚れが溜まりやすい特徴があります。亀頭包皮炎とは、この不衛生な状態の包皮と亀頭の間に細菌が侵入し、炎症を引き起こす疾患です。

症状

  • 亀頭や包皮が炎症によって赤く腫れる
  • 痛みや痒みが現れることがある
  • 症状が悪化すると膿が排出され、強い痛みが生じることもある

尿路異常

尿路異常には様々な状態が含まれています。これらの尿路異常は一般的に先天的なものであり、患者さんによって症状や重症度が異なります。治療は症状の程度や合併症に基づいて行われ、薬物療法から手術までさまざまなアプローチが考えられます。医師の指導のもとでの診断と治療が重要です。

重複腎盂尿管

腎盂が通常よりも2つに分かれている状態。これにより、尿管の重複も見られることがあります。

尿管異所性開口

尿管が通常の位置ではなく、膀胱の異なる部位に開口している状態。これが原因で尿漏れや感染症が起こることがあります。

尿管瘤

尿管が狭窄している状態。これにより尿の正常な流れが妨げられ、様々な症状が引き起こされることがあります。

先天性水腎症

腎盂や尿管が先天的に拡張している状態。これにより、尿が正常に排泄されなくなり、腎機能に悪影響を及ぼすことがあります。

多嚢胞性異形成腎

腎臓が多くの小さな嚢胞で覆われている状態。これが先天的に起こり、正常な腎機能に影響を与えることがあります。

馬蹄腎

腎臓が通常よりも下部でつながっている状態。これにより、腎臓の形態が馬蹄のようになるため、通常の腎臓よりも合併症のリスクが高まります。

尿道下裂

尿道下裂は、男性の先天的な陰茎の形態異常であり、おしっこの出口(尿道口)が陰茎の先端に到達せず、手前に開口している状態です。この状態は約1000人に3人ほどで見られ、軽度な場合は亀頭部手前に、高度な場合は陰嚢や陰茎のつけねに尿道口が開いています。

尿道下裂の原因は完全には明らかではありませんが、男性外性器の発育分化において、胎児期の性ホルモンの作用が必要であると考えられています。性ホルモンの分泌や作用に問題が生じることが関与している可能性があり、家族に高度な尿道下裂が見られる場合、その発生頻度が通常より高くなることが報告されています。

生まれたばかりのお子さんにおいて、高度な尿道下裂が見られる場合、性分化疾患の可能性があることもあり、ミクロペニスや精巣触知の難しさなどが認められる場合には染色体検査が行われることがあります。

治療は主に手術が必要であり、生後6ヶ月から1歳6ヶ月の間に行うのが一般的です。早い段階で治療を受けることが、将来的な立ち小便や性行為における問題を軽減する重要な要素となります。また、精神面においても、形態異常に対する恥ずかしさやコンプレックスなどの問題が生じる可能性があるため、適切なサポートが必要です。

停留精巣

精巣は通常、妊娠後期において陰嚢内に下降し、妊娠35週頃には陰嚢の下に固定されます。この正常な下降が停滞してしまう状態を「停留精巣」と呼びます。停留精巣は比較的一般的な疾患であり、出生時の診察や乳児検診で見つかることが多いです。

精巣は女子にとっての卵巣にあたるもので、卵巣は基本的にお腹の中にあるものですが、胎生期には精巣もお腹の中にあります。それがだんだん下降していって産まれるころには陰嚢のなかに移動して固定されます。なぜ精巣が下降するのかというと、精巣が陰嚢内に移動せずにずっとお腹の中にあると36ー37℃くらいの体温に常にさらされてしまい正常な精子をつくれなくなります。精子をつくるのに適した温度は34度くらいとされていますので人間に限らず哺乳類ではオスの睾丸は体の外側のほうにあることが多いです。

停留精巣がなぜ起きるのかはっきりしたことはよくわかっていませんがだいたい男児の1%くらいでおき、未熟児の場合は15%くらいで起きるといわれています。お兄さんやお父さんが停留精巣だったり家族歴があると起きやすいとされています。

治療としては、しばらく様子をみて半年から1年くらいは睾丸が自然に降りてくるのを待ちますが1歳以降になるとあまり降りてこなくなりますので睾丸を陰嚢までおろすための手術をすることが多いです。

停留精巣をそのままにしておくと前述のように造精機能が低下してしまうことがありますが、さらに長期間腹腔内にいると癌化しやすいとされています。確率としては一般男性の5-10倍精巣癌になるリスクが上がるとされています。

陰嚢水腫

新生児の男児に見られる一般的な病気には、陰嚢が膨らむ状態である鼠径ヘルニアがあります。この病気は精巣周囲に液体がたまり、発症原因は子どもの鼠径ヘルニアと同様です。胎児期に精巣が陰嚢まで下降する際、その過程で臓器を包む腹膜が引っ張られ、陰嚢に腹膜が入り込むことがあります。通常、生まれる際にはこの腹膜が閉じるはずですが、完全に閉じないケースが見られます。完全に閉じなかった場合、鼠径部の腹膜鞘状突起が広がり、そこに腸が落ちて鼠径ヘルニアが発生します。これは一般的に脱腸と呼ばれる状態です。腹膜鞘状突起が狭い場合には、腸は落ちてこないが、おなかの中の水分が通り、陰嚢にたまる陰嚢水腫を引き起こすこともあります。