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女性泌尿器科

女性の泌尿器科

頻尿、尿漏れ、血尿、排尿時の痛みなど、尿路に関する症状でお困りの方は、当院にご相談ください。特に女性の患者さんは受診をためらうことがありますが、重大な疾患が隠れている場合もあるため、悩みを放置しないことが大切です。また、症状によって生活の質は著しく低下することもあります。40歳以上の40%程度に尿漏れ経験があるといわれており、女性にとって排尿障害は珍しい疾患ではありません。
当院では女性の患者さんのプライバシーを尊重し、安心して受診いただける環境を提供しています。待合室はお互いの目線が合わないように席を配置しております。また特別な配慮が必要な場合には事前にお知らせください。個室での診察待ちも可能な範囲で対応いたします。診察ではまず採尿(尿検査)と残尿測定検査を行い、必要に応じて超音波検査などの追加検査を行います。治療プランは患者さんとの綿密な相談のもとで決定し、一人ひとりに合わせたアプローチを取っています。どれだけ些細な症状でも気軽に当院にご相談ください。

このような症状はありますか?

女性の主な泌尿器疾患

過活動膀胱

過活動膀胱

過活動膀胱は、排尿筋の過剰な収縮によって膀胱が尿を蓄積できなくなり、頻尿や強い尿意などの症状が現れる疾患です。この疾患は主に「神経因性」と「非神経因性」に分類され、非神経因性が多いとされています。
神経因性過活動膀胱は、脳と膀胱をつなぐ神経に障害が生じることによって発症します。この原因として具体的には脳梗塞や脳出血後、脊柱管狭窄症などの神経疾患などがあります。骨盤内の手術後で膀胱への神経がダメージを受けた場合も起きます。一方、非神経因性過活動膀胱は、骨盤底筋の低下、尿路の閉塞、女性ホルモンの減少などが原因で膀胱が過敏になり、症状が現れます。
過活動膀胱の症状には頻尿、急激な尿意、尿失禁、夜間の頻尿などがあります。これらの症状に悩んでいる場合はご相談ください。当院では「β3刺激薬」や「抗コリン薬」などの内服治療に加え、「ボトックス膀胱壁内注入治療」も提供しており、膀胱の異常な収縮を抑制することで症状の緩和を図ります。そのほかに更年期の女性の排尿症状に対しては女性ホルモンの補充療法(膣剤)が有効という報告もあります。

膀胱炎

膀胱炎

膀胱炎は大腸菌(70-80%)などの細菌が尿路に感染し、炎症を引き起こす疾患です。膀胱炎は女性に多く、その理由として男性と比べて尿道が短く尿道の出口が膣前庭部につながっており汚れやすいことが挙げられます。主な症状には頻尿、排尿時の痛み、残尿感、白濁した尿、血尿などがあります。適切な抗生物質の服用により、症状は数日で緩和されることが一般的です(単純性膀胱炎)。しかし、治療を途中で中断すると再発しやすいため、医師の指示に従って治療を続けることが重要です。この感染症はトイレの我慢や過度なストレス、睡眠不足などによる免疫力の低下が原因とされていますが、性行為やシャワートイレの使用によって感染することもあります。膀胱炎が悪化した場合上行性感染といって膀胱から尿管を伝って腎臓まで細菌がひろがって腎盂腎炎をおこすことがあり、そのような場合入院治療が必要になることがあります。
膀胱結石や膀胱がんと似ていることがあるため、症状が現れた際には迅速に泌尿器科を受診することが推奨されます。慢性的に膀胱に炎症を繰り返すことによって膀胱癌が発生するリスクが上がるという報告もあります。そのほかの原因として尿路結石や膀胱癌、前立腺肥大症、糖尿病などの基礎疾患をお持ちの場合には尿路感染を起こしやすかったり、重症化しやすかったりします。
単純性の膀胱炎ではほとんどの場合抗菌薬の内服をすれば1週間以内に治癒しますが、耐性菌の問題もあり抗菌薬が効きにくい場合があります。尿培養検査を行って菌を特定することでよりターゲットを絞った抗菌薬治療が可能になります。
膀胱炎をおこしにくい生活習慣として

  1. 普段から十分に水分を摂取すること(年齢にもよりますが1.5-2L/日程度)
  2. 排尿をがまんしないこと
  3. 外陰部を清潔に保つこと

排泄後は前から後ろに向かって拭くなどがあります。

血尿

血尿には「肉眼で確認できるもの」と「尿検査で分かるもの」の2つのタイプがあります。肉眼で確認できる血尿の場合、膀胱炎や膀胱がん、腎臓がんなどの潜在的な疾患が考えられます。痛みを伴う場合、尿路感染症の症状として血尿が現れている可能性が高くなります。
血尿がある、健診で指摘された場合は、できるだけ早く泌尿器科を受診することが大切です。
「肉眼で確認できるもの」はつまり明らかに尿路のどこかから出血している、出血量が多いということを意味します。癌を含め何らかの原因があるはずですので徹底的に調べた方がよいです。
「尿検査で分かるもの」は健診で指摘されることがほとんどです。見た目には血はまじっていないけど検査をすると血が混じっている、つまり出血量は少な目ということを意味します。
尿の通り道のどこかから出血していることになりますが、これはつまり腎臓、尿管、膀胱、尿道と、男性であれば前立腺というのがありますのでこれらをひとつずつつぶしていく必要があります。

原因になる病気としてまずは腎臓がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がんがあります。ただ尿路の癌の97%以上が35歳以上でしたという報告もあり、若い人はあまり心配しなくて良いと思いますが35歳超えている場合には注意したほうがよいです。腹部エコーで腎臓を確認したり、膀胱鏡で膀胱の中を実際に観察してみるというのが確実な方法になります。ほかにも尿細胞診で尿中に癌がいないかをチェックする方法もあります。

もう一つの原因として糸球体腎炎という病気があり小児や若い方に多く見られます。腎臓の中から出血している状態です。腎臓は血液をこしとって濾過して出てきた毒素を尿として排泄していますが、この濾過する膜が糸球体や尿細管と呼ばれています。この血液をろ過する機能に問題があると赤血球が尿に混じってきます。これは尿の検査で尿中に変形した赤血球が混じっているという事で判別できます。他にも尿蛋白が混じっていると糸球体腎炎の可能性が高くなります。

そのほかの原因として、尿路結石や膀胱炎などの尿路感染、激しい運動をした後や、ぶつけたり外傷でも尿に血が混じることがあります。女性ですと月経の血液が尿に混じることもあります。様々な検査して調べたが結局原因がよくわからなかったということもあり、自然に改善することもありますが定期的に尿検査や画像検査でフォローした方がよいです。

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尿路感染症(膀胱炎・尿道炎)

尿路感染症は、尿の通り道に細菌が侵入し、感染が起きて炎症が生じる疾患です。感染が発生した部位によって、いくつかの異なる種類に分類されます。
排尿痛、頻尿、尿の白濁、血尿、腹部の不快感、高熱、腰痛、悪寒、嘔吐などの症状が現れた場合は、前立腺炎、膀胱炎、尿道炎といった尿路感染症の可能性があるため、なるべく早くご相談ください。外からのばい菌の侵入によることが多いため女性の場合は膀胱炎、男性は尿道炎や前立腺炎が多く見られます。男性の尿道炎の原因の多くは性感染症(淋菌・クラミジア)になります。

尿失禁

「尿失禁(尿漏れ)」は、自分の意志に関係なく尿が漏れる症状を指します。この問題は年齢や性別に関係なく、多くの人が直面する悩みの種です。特に女性の場合は40歳以上の40%に尿漏れ経験があるとされています。その原因は様々であり、適切な治療が必要です。薬物療法や手術など、原因によっては症状を軽減または解消する方法が存在します。恥ずかしさから我慢せず、尿漏れに悩んでいる場合は、泌尿器科を受診し、専門医に相談することが重要です。

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腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、笑ったり、ジャンプしたり、重い荷物を運んだ際などに、腹圧が急激に上昇することで尿漏れが生じる状態です。この症状は、骨盤底筋の弱体化によって引き起こされます。主な原因として、①加齢、②妊娠・出産、③肥満が挙げられます。女性は男性に比べて尿道が短いため、特に腹圧性尿失禁にかかりやすいとされています。女性の場合は男性とくらべて妊娠・出産ができるように解剖学的に骨盤がひろくできています。立った時にお腹の中にある臓器(腸、子宮、膀胱など)が下に落ちてこないように骨盤底筋が一番下で支えています。骨盤底筋には肛門や膣などの通り道のために隙間があいています。この骨盤底筋がゆるむことにより尿もれがおきるわけですが一つ目の原因は加齢に伴っておきる筋力低下になります。加齢に伴う筋力低下は避けられませんので日常的にインナーマッスルである骨盤底筋を鍛えることが大切になります。二つ目が妊娠・出産によって骨盤底筋が伸びたり一部断裂してダメージを受けることによります。産めば産むほど骨盤底筋に負担がかかりますので出産回数の多い女性は尿漏れしやすいとされています。3つ目の原因として肥満があります。これについてもお腹の脂肪を骨盤底筋が支えているわけですのでその上に載っている脂肪がおもければ重いほど骨盤底筋に負担がかかります。この中で日常生活で改善できることとして第一は肥満の改善になります。体重を減らすだけで腹圧性尿失禁はある程度改善できます。

神経因性膀胱

膀胱や尿道の神経障害によって、尿意が感じにくくなり、尿漏れや尿失禁、排尿困難などの症状が生じることがあります。神経因性膀胱を放置すると腎臓に負担がかかり、腎機能低下を引き起こす危険性があるため、早期の治療が重要です。
神経因性膀胱の主な原因には、頚椎ヘルニアや腰椎ヘルニアなどの脊柱管狭窄症、外傷による脊髄損傷、直腸や子宮などの骨盤内の手術歴、先天性疾患などが挙げられます。

間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(IC/BPS)

「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群」は、膀胱に原因不明の慢性炎症が生じ、膀胱や尿道の粘膜表面を守るバリアに障害が生じ、尿の成分が粘膜に浸みこむことで引き起こされます。これにより、尿が近く感じられる頻尿や、膀胱や尿道に不快感や痛みが生じ、尿がたまるとその痛みが強くなるなど、非常に不快な症状が現れる疾患で再発と寛解を繰り返す症候群です。原因ははっきりしていませんがコーヒー、紅茶、アルコール、炭酸飲料、トマト、バナナ、柑橘類など、特定の食べ物や飲み物が引き金となることが報告されています。一見、過活動膀胱や細菌性の膀胱炎と似た症状が見られますが、実際には異なる病気です。この疾患は非常につらい症状をもたらし、他人に理解されにくいことがあり、それが患者さんの生活の質を著しく損なうこともあります。実際には通常の膀胱炎として抗生剤治療をしているにもかかわらず症状に改善がなく、さまざまな検査をしても原因が特定できない場合に間質性膀胱炎を疑います。膀胱が膨らんだときに痛みが悪化し、膀胱がからになり縮むと痛みが改善するのが特徴です。同様の症状をきたす「膀胱がん」でないことを確認する必要がありますので血尿がある、喫煙者、40歳以上の場合は尿細胞診での確認が必要です。膀胱鏡検査では特徴的なHunner病変(膀胱粘膜が赤くただれた状態)と呼ばれる所見や膀胱が拡張して粘膜が裂けることによって起きるさみだれ状の粘膜出血がみられることがあります。明確な診断方法があるわけではなく、頻尿、膀胱痛などの下部尿路症状があるが、膀胱炎、癌、結石、過活動膀胱などの疾患ではなく、原因がはっきりしない状態を指します。
治療としては生活習慣の改善(原因となる食品を避ける、定期的な排尿など)が第一ですが、改善しない場合、麻酔下に膀胱水圧拡張術を行うこともあります。

尿道憩室

尿道憩室は、尿道につながるポケットで、尿道のすぐ隣にある腺の炎症や感染症が原因です。成人女性の1%から6%で見られ、主に40歳から70歳の女性に発生します。男性ではまれで、尿道外傷に関連して発生することがあります。症状には排尿時の痛み、排尿後の滴下、血尿、性交時の痛み、尿意切迫感、排尿障害、尿失禁、不快感などがありますが、約20%の人は無症状です。発症の原因や症状の出現には個人差があり、医師の診断と治療が必要です。

骨盤臓器脱

骨盤底筋のゆるみにより腹圧性尿失禁の症状がでてきますが、さらに骨盤底筋のゆるみがすすむと骨盤臓器脱を引き起こします。骨盤臓器脱は主に女性に見られ、膀胱、子宮、直腸などの臓器が骨盤底筋の弱化や損傷により正常な位置から脱出する状態です。尿道脱、膀胱脱、子宮脱、直腸脱などがあり、妊娠、分娩、腹圧の増加(肥満)、手術などが原因となります。症状には圧迫感、尿漏れ、便失禁、性交時の痛みなどがあります。治療法は症状や患者の状態により異なり、物理療法、薬物療法、リハビリテーション、手術が選択されることがあります。早めの医師の相談と適切な治療が重要です。
子宮脱では子宮が膣の出口あたりまで落ちてきて股に何か挟まっている感じとかピンポン玉のようなものが触れるという自覚症状がありますが、目に見えて分かるくらい出てくる場合には手術して治したほうがよいことが多いです。自分で自分の膣や尿道を普段からチェックすることは少ないため、子宮が落ちてきていることに気づかず、いよいよ膀胱とか尿道を圧迫して尿がでなくなって体調不良(尿閉や腎不全)をきたしてから病院にこられる場合もあります。自分の膣や尿道に異変がないかは普段から意識的にチェックしたほうがよいです。軽度の骨盤臓器脱の場合には腹圧性尿失禁の治療と同様に、骨盤底筋体操や医療機器(高密度焦点式電磁)を用いた骨盤底筋刺激療法で骨盤底筋の緩みを改善することができます。

膀胱がん

膀胱がんは、膀胱内に発生するがんの種類で、大まかには「表在性膀胱がん」と「筋層浸潤がん」の2つに分類されます。これらのがんの特性にはいくつかの違いがあります。
表在性膀胱がんは膀胱の内側に向かって隆起するがんです。悪性度が比較的低く、転移のリスクは少ない傾向があります。ただし、再発しやすい性質を持っています。
筋層浸潤がんは膀胱の外側へ向かって進展するがんです。悪性度が高く、転移しやすい特性を持っています。特に50歳以上の発症率が高いことが報告されています。どちらの種類の膀胱がんであっても、診断には超音波検査、膀胱鏡検査、尿細胞診などの検査が行われます。
これらの検査結果をもとに、がんの種類と進行度を確定診断し、その後の治療プランを立てます。

膀胱癌のリスクになるものとして
喫煙:男性の5割くらい、女性の2-3割の膀胱癌の原因とされています。
喫煙歴(受動喫煙も含め)も膀胱癌のリスクを上げますが、現在喫煙している方がリスクはより上がります。

化学物質(芳香族アミン):化学染料、塗料、金属、ゴム、石油精製に関連する職場での化学物質への曝露による膀胱癌発生が全体の1-2割程度を占めます。そのような環境で働く労働者のかたは適切な防護措置が必要になります。
そのほかにヒ素も膀胱癌と関係しているとされています。

骨盤への放射線照射:子宮、前立腺、直腸の癌などの治療のために骨盤内に放射線を照射したことのあるかたは膀胱癌発症リスクがあがりますので注意が必要です。

感染症:膀胱住血吸虫症(ビルハルツ症)、慢性的な尿路感染症、性感染症(ヒトパピローマウイルス、淋病)も関連が指摘されています。

そのほかにも肥満、尿道カテーテルの長期留置、薬剤性(シクロホスファミド、ピオグリタゾン)の関連も指摘されています。

膀胱と尿管、腎臓(腎盂)はつながっており尿路上皮(移行上皮)といって組織学的には同じ構造をしており、これらにできる癌はどれも似た性質をもっています。出来た場所によって膀胱癌(90%)、尿管癌(8%)、腎盂癌(2%)と名前が変わります。

膀胱がんには主に2種類あり、筋層浸潤性膀胱がんと非筋層浸潤性(表在性)膀胱がんに分類されます。表在性の膀胱癌の方が頻度が高いです(75%程度)が治療すれば根治できる可能性が高いです。一方で筋層浸潤膀胱癌は頻度は低めですが進行が早いため注意が必要です。

表在性の非筋層浸潤性膀胱癌にも2種類あります。

  1. 膀胱癌の根っこが浅く膀胱粘膜の深さまでしかなく見た目ははイソギンチャクの様な形をしており乳頭状腫瘍と呼ばれており、Ta期は粘膜層まで、T1期は粘膜下の結合組織までの浸潤になります。
  2. 上皮内癌(CIS、Tisとして分類)は膀胱粘膜の深さまでしか癌がいませんが平坦で横に拡がっていきます。悪性度は高くリンパ節転移や他の臓器への転移をしやすいとされています。
    1の乳頭状の膀胱癌と2の上皮内癌が混在する事もありそのような場合は再発しやすく、進行も早いです。

筋層浸潤性膀胱癌は膀胱粘膜を越えて膀胱筋層まで根っこが深く進んでいる癌になります。
T2期は膀胱筋層まで、T3期は膀胱周囲まで、T4期は膀胱外の臓器(前立腺、精嚢、子宮、膣など)まで浸潤している状態ですので早急な治療が必要です。

膀胱癌が見つかるきっかけ

・肉眼的血尿(見た目で分かる血尿)が多いです。
・顕微鏡的血尿(検査で分かる血尿)で見つかる場合も膀胱癌患者の14%程度あります。
・他にも頻尿、尿意切迫感、排尿困難など膀胱炎症状で見つかる場合もあります。
・進行すると痛み(腹痛、側腹部痛、骨痛、骨盤痛)食欲不振、下肢の浮腫、咳、呼吸困難、喀血などの呼吸器症状で見つかることがあります。

膀胱癌の診断は、
・尿検査で尿に血が混じっていること
・尿細胞診で顕微鏡でみたときに尿中に癌細胞が見つかること
・エコーで膀胱や腎盂内に腫瘍が見つかる
・膀胱鏡で膀胱内を観察すると腫瘍があるかどうかがはっきりします。
・転移がないかどうかは全身の造影CTが有効です
・他にも診断が困難な場合には尿管鏡検査や逆行性尿路造影検査などを行なうこともあります。

膀胱癌の治療はまずは手術が基本になります。
膀胱内に膀胱鏡をいれて腫瘍をけずりとる手術、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)がもっとも多く行われています。これは腫瘍を削り取る治療目的と、癌の悪性度を調べる検査目的の2つの目的があります。これにより腫瘍をすべて削り取れた場合には根治が期待できます(T2期未満の場合)。また、TURBTの手術直後に膀胱内に抗がん剤を単回注入することで膀胱癌の再発リスクをさげることができます。

さらに、病理結果で悪性度が高い場合には6週間以内に再度TURBTを行なってさらに精密な病理診断を行なうことがあります(セカンドTURBT)

膀胱癌は再発しやすい特徴があるため、TURBTで全ての腫瘍が削り取れた場合でも術後3か月おきに膀胱鏡で膀胱内に腫瘍が再発していないか確認する必要があります。
病理組織検査で悪性度が高めであった場合、腫瘍の個数が多かった場合には再発予防のために、BCG(bacillus Calmette-Guerin)の膀胱内注入療法を行うのが良いとされています。週に一回膀胱内に注入する治療を6-8回行ないます。さらに維持療法として6か月おき程度に継続的にBCG治療を行なうこともあります。上皮内癌(CIS)にBCG治療を行うと7割以上の人で癌が消滅します。なぜ結核菌を弱毒化したBCGを膀胱に入れたら膀胱癌がなおるのかというと、膀胱内にBCGが入ると、膀胱の癌細胞の中にとりこます。癌細胞の中に入った結核菌(BCG)に対して、からだの免疫細胞が反応して癌細胞をやっつけるというしくみになります。BCG膀胱内注入療法の効果は人によってことなりますが、BCGで癌が消滅しない場合を不応性、一旦縮小したけどまた再増大してきた場合をBCG抵抗性とよびます。

癌の深達度がT2期以上でリンパ節や他の臓器に転移が無い場合には現在は膀胱全摘が標準的な治療とされています。
膀胱全摘をする場合にはその前に4コース(4か月)程度の術前抗がん剤治療を行なったほうが膀胱全摘後の再発率が低下すると言われています。
膀胱全摘をしたくない場合、腫瘍が小さい場合や個数が少ないなど限られた場合にはTURBTと抗がん剤治療と放射線治療の併用療法を行なうこともあります。

癌の深達度がT2期以上でリンパ節や他の臓器に転移がある場合(IV期)にはまずは抗がん剤治療を行なうことになります。
現在は抗がん剤だけでなく、免疫チェックポイント阻害剤(キイトルーダ、バベンチオ)免疫薬物複合体(パドセブ)などの新しい薬剤が開発され使用可能になっており、生存期間が延長してきています。

腎臓がん

腎臓は、背骨の両側に位置し、ソラマメに似た形状を持つ臓器で、体内の血液をろ過して老廃物や余分な水分を排出する役割を果たしています。この過程で尿が生成され、尿は腎盂を経由して排尿されます。腎臓がんは、この尿を生成する部分に発生するがんです。
腎臓がんにかかるリスクは、透析治療を受けている方が特に高いとされています。早期では症状がほとんど現れないため、透析治療中の方は定期的な検査を受けることが重要です。腎臓がんが進行すると、血尿、疼痛、腹部のしこりなどの症状が出ることがあります。

腎臓がんの原因として特定されている遺伝子がありますが、ほかにも環境の影響もあるとされています。よく知られている原因として喫煙、高血圧、肥満などの生活習慣とVHL(フォン・ヒッペル・リンド―病)遺伝子変異があります。

腎臓がんのステージ

腎がんの診断には造影CTまたはMRIなどの画像検査が使われ、ほぼ正確な診断ができます。
癌のステージは4cm以下がT1a, 4-7cmがT1b、7cm以上がT2となります。画像上腎臓の内側(腎洞脂肪や血管内)に進展している場合にはT3、腎臓外に飛び出している場合はT4となります。そのほかにリンパ節転移があるかどうか、他臓器に転移しているかどうかによってステージが決まります。

腎がんの治療は早期がんの場合は手術が基本になります。
腎部分切除術:T1a 4cm以下の場合は腫瘍だけをくりぬく手術が標準的です

腎摘除術:T1b4cm以上の場合、腫瘍だけをくりぬくことが難しければ腎臓をすべて摘出することが多いです。

手術のやりかたは開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット手術の3種類がありますが、近年はロボット手術で行われることが増えています。

さらに術後に再発リスクが高い場合には再発予防の薬として免疫チェックポイント阻害剤(キイトルーダ)を使うことがあり、これにより再発リスクを低下できます。

アブレーション

手術がしたいけれど体力的な問題、糖尿病や狭心症などの併存疾患の状況のために手術に耐えられないと判断される場合には手術以外にアブレーション治療というのがあります。体の外からCTで確認しながら針を刺して冷凍凝固する治療もあり、手術と同等の治療成績がでたとの報告もあります。

無治療経過観察

4cm以下の腎がんの場合、進行がゆっくりであることが多い為、なにも治療せずに経過を見ることがあります。1年間でほぼ変わらないか数ミリ大きくなる程度であることもあり、無治療経過観察も有力な選択肢となります。進行するまでの期間は10ヶ月くらい(中央値)だったという報告があります。一方で進行が速いタイプの腎がんもあるため注意が必要です。

腎臓がんがステージIVつまりほかの臓器に転移している場合には現在は手術は行わず薬の治療が行われることが多くなっています。現在は免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ、キイトルーダ、ヤーボイ)と分子標的薬(インライタ、レンビマ、カボメティクスなど)を組み合わせて2剤併用療法を行うことが多いです。腎癌は肺や骨、リンパ節に転移しやすいです。肺転移には薬が効きやすいですが、骨転移や肝転移には薬が効きにくいという特徴があります。

全身薬物療法の選択肢は病理組織が淡明細胞型腎がんの場合

の5種類が日本では使用できます。病気の進行具合、IMDCリスク分類、全身状態によってどの薬を使うか決まります。

腎がんの進行するスピードはどの程度なのか

病理組織は一番多いタイプの淡明細胞型腎がんとくらべて乳頭状腎がんは進行が速いことが多いです。また全身状態、採血結果(ヘモグロビン、白血球、血小板、カルシウム)からIMDCリスク分類されFavorableリスク、intermediateリスク、Poorリスクに分けられます。

Favorableリスクの場合は進行がゆっくりで治療を要しない場合もありますが、Poorリスクの場合にはあっという間に進行してしまいます。

最初の2剤併用療法の薬が効かなくなってしまったら(癌が大きくなった、新たに転移がでた)、他の分子標的薬の飲み薬を順次つかっていくことになります。

尿路結石症

尿路結石は、腎臓から尿管、膀胱、尿道までの「尿路」内で形成される結晶状の物質で、尿の成分が固まってできます。この結石は尿路の異なる部位に存在する場合、名称も異なり、腎結石、尿管結石、膀胱結石に分類されます。尿路結石は現代病といわれており、生活習慣や食生活が大きく関係しています。
高尿酸血症(痛風)や副甲状腺機能亢進症などにかかるとリスクが高まるため、これらの疾患がある方は特に注意が必要です。結石自体は腎臓で形成され、初期段階では通常は症状が現れません。しかし、尿管に詰まるなどして尿の流れが妨げられると、激しい痛みや発熱、血尿などの症状が現れることがあります。
結石が尿管の特定の箇所に詰まることが多く、この部分での詰まりが症状を悪化させることが多いです。小さな結石は自然に排石されることもありますが、大きな結石の場合は治療が必要となります。また、結石の原因になっている基礎疾患に対しても治療が行われます。
結石は再発リスクが高いため、治療後でも水分摂取を積極的に行い食生活に気を付け(動物性たんぱく質控えめ、塩分控えめ、適度なカルシウム摂取)、定期的な検査を受けて経過をモニタリングすることが大切です。

尿路結石は、男性の方が女性よりも圧倒的に多く、これはおそらく食生活とか生活習慣が男性のほうが無関心だからというのが関係しているとされています。年齢としては30-60歳くらいが一番多く。10-20代の若い頃は運動量が多いため、比較的体型がスリムなことが多いと思いますが、仕事をするようになると運動不足や食生活が乱れやすくなる(メタボリック症候群)ことが関連していると考えられます。一方で小さいころからスナック菓子やカップラーメンなどを多くたべていると10代でも大きな尿路結石ができてしまう場合もあります。

尿路結石は何からできているのか。尿路結石の成分は、約90%はシュウ酸カルシウム結石で、残りの約5%は尿酸結石です。これらの結石は、尿の中の濃度が濃くなると尿中に結晶化して石になります。シュウ酸カルシウム結石は、尿中のカルシウムとシュウ酸が結合して形成されます。尿酸結石は、尿酸が過剰になると形成されます。

食生活、特に動物性たんぱく質と塩分が多く含まれているファストフードの過剰摂取が尿路結石の原因となります。動物性たんぱく質は尿酸の生成を増加させますし、塩分をとりすぎると尿中のカルシウム排泄量を増えて結石ができやすくなります。

では、食生活をどのように気をつければよいのか。まず第一は飲水量を十分に確保することです。水分を十分に摂取することで、尿がうすくなりますので、結石が結晶化するのを防げます。特に、暑い季節や運動後など、汗を多くかく時期や状況では、さらに多くの水分を摂取することが必要です。だいたいの目安は一日2Lできれば3Lとされています。

つぎに、シュウ酸を多く含む食品の摂取を控えることも大切です。シュウ酸を多く含む食品としては、タケノコ、紅茶、コーヒー、チョコレート、ココア、ピーナッツ、アーモンドなどがあります。まったく食べないようにするというよりも、適度な摂取にとどめるのがよいです。

さらに、カルシウムの摂取には注意が必要です。カルシウムを制限したほうがよいと考えがちですが、実はカルシウムはしっかり摂取した方が良いとされています。カルシウムは腸のなかでシュウ酸と結合し、その吸収を抑えるため、適切な量のカルシウムを摂取することで(1日1000-1200㎎程度)、シュウ酸の吸収自体を減らすことができます。カルシウムを多く含む食品としては、牛乳・チーズや豆腐があります。ただし、過剰な脂肪摂取は尿路結石ができやすくなるので、脂肪分の少ない食品を選ぶことも重要です。

その他に、ビタミンCの過剰摂取も尿路結石のリスクを高める可能性があります。ビタミンCは体内でシュウ酸に変換されるため、過剰に摂取するとシュウ酸の排泄量が増え、結石ができやすくなる可能性があります。適度なビタミンC摂取は疲労回復や抗酸化作用として効果的ですが過剰な摂取は控えた方が良いです。

というわけで尿路結石の予防には、水を1日2L以上のむ、シュウ酸を多く含む食品を減らす、塩分控えめ、動物性タンパク質をひかえる、適切なカルシウム摂取が大事です。

尿路結石は、食生活の改善によって予防することが可能です。

尿道ポリープ(尿道カルンクル)

尿道ポリープ、通称「尿道カルンクル」は、尿道内にできるポリープのことです。特に更年期を過ぎた年齢層に多くみられます。一般的に、尿道の出口付近、つまり肛門側にポリープが発生します。尿道ポリープは、無症状の場合もあれば、出血や痛みなどの症状を伴うこともあります。無症状の場合、経過観察が行われることもありますが、症状が出る場合は手術や薬物療法などが選択されることがあります。
また、尿道ポリープの発症には更年期の女性ホルモン(エストロゲン)分泌の低下が関与しているとされています。大きさは数mmから1cm程度のことが多く、下着とこすれることで出血したり痛みの症状があり病院を受診されることが多いです。砕石台での視診による診察でほぼ診断できます。まれに尿道や膀胱の悪性腫瘍や尖圭コンジローマのこともありますので疑わしい場合は生検したり切除したりすることがあります。基本的には経過観察でよいですが、大きくて痛みや出血症状が強い場合には切除します。尿道カルンクルは一時的なこともあり、また女性ホルモンの補充をすることにより縮小することがあります。

尿勢低下

「尿の勢いが弱い」症状に加えて、「排尿しにくい」「残尿感がある」などの症状がみられる場合、膀胱や尿道、前立腺に関連する問題が存在する可能性があります。加齢に伴う筋力低下(膀胱の排尿筋低下)が原因であることもありますが、疾患によっては尿道が狭くなったりすることがあります。これらの症状は身体からの危険信号かもしれないため、放置せずに泌尿器科での相談や検査を受けることが重要です。

前立腺肥大症、前立腺癌、尿道狭窄、神経因性膀胱、低活動膀胱、尿閉など

膣乾燥症

膣の乾燥は潤滑不足で、性生活や健康に悪影響を与える状態です。原因はホルモン変動、抗がん剤の使用、ストレス、加齢などがあります。
また、閉経後の女性に起こるGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)では閉経後の女性ホルモン低下に伴う外陰部・膣の変化で、膣粘膜が乾燥、弾力の低下が生じ、性交時の痛みや不快感が増加します。治療法はホルモン療法や乾燥を防ぐ潤滑剤の使用が一般的です。

膣炎

「膣炎」は、女性の膣が炎症を起こす状態を指し、通常は湿潤で細菌叢がバランス良く存在する膣内で、さまざまな原因によりバランスが崩れることで発生します。膣炎は女性の健康に関する重要な問題であり、細菌、真菌(特にカンジダ)、寄生虫、ウイルスなどが原因となります。性行為や不適切な衛生状態、免疫力低下もリスク要因となります。症状は個人によって異なりますが、かゆみや痛み、膣や外陰部の腫れや赤み、異臭やおりものの変化、排尿時の痛みや頻度の増加が一般的です。

膣炎の診断は身体診察や詳細な問診に基づきます。検査にはおりものの検査や微生物の培養、血液検査が含まれます。

治療法は原因によって異なり、抗生物質、抗真菌薬、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬が一般的です。治療と同時に衛生習慣の改善や免疫力強化が重要です。予防には適切な衛生習慣の実践が必要で、清潔を保ちながらも膣内のバランスを崩さないように注意が必要です。また、性行為などのリスク要因に対する予防策も重要です。

性感染症

性感染症

性感染症は性行為による皮膚や粘膜の感染症で、男女で症状に差があります。自覚症状がないまま進行することもあり、感染拡大や再感染リスクもあるため、感染が分かった場合はパートナーも検査が必要です。性感染症は不妊の原因や母子感染のリスクもあるため、早期治療が重要です。症状がなくても不安なことがあればご相談ください。

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泌尿器検査

尿検査

尿検査は、尿を採取してその成分を分析し、健康状態や疾患の診断に役立つ情報を入手する検査です。尿中のタンパク質や糖の有無を調べるほか、顕微鏡で赤血球や白血球、細菌の存在を確認することができます。これにより、様々な泌尿器の問題や全身の健康状態を評価するのに役立ちます。当院ではSiemens社の尿分析装置を使用しており短時間に解析することができます。

超音波検査

超音波検査は、超音波を用いて身体内部の状態を観察する検査方法です。この検査は痛みや不快感がなく、被ばくのリスクもないため、安全性が高く、妊娠中の方も安心して受けられます。泌尿器科では、腎臓、膀胱、前立腺、陰嚢(精巣)などの臓器の診断に利用され、疾患や異常の診断に役立てられます。皮膚科では下肢静脈瘤や下肢静脈内血栓の診断に利用します。

膀胱鏡検査

膀胱鏡は、非常に細い内視鏡スコープを尿道から挿入し、尿道や膀胱の粘膜をリアルタイムで観察する検査です。この検査は主に血尿がを認めた患者さんや膀胱がん術後のフォロー中の患者さん対して行われ、膀胱粘膜の状態をリアルタイムで確認できることから、膀胱がんなどの診断や再発評価に有効です。

尿流測定検査

尿流測定検査は、排尿時の尿の勢いを定量的に評価するための検査です。専用のトイレに計測機器が内蔵されており、患者さんはいつも通りに排尿します。この検査は立った姿勢でも座った姿勢でも受けることができます。尿流測定と同時に超音波検査による残尿測定も行われ、より客観的な情報を取得し、確定診断や重症度の判定に役立てられます。

女性泌尿器科専門医による女性患者さん専用外来を開設

当院では、毎週火曜日の午前に女性医師による泌尿器の専門的診療を行っています。
女性の泌尿器科疾患に関する相談は、他人にはなかなかしにくいこともあるため、女性泌尿器科医が丁寧にヒアリングいたします。他の曜日でも女性の患者さんの受診は可能ですので、お気軽にご予約いただければと思います。