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GLP1/GIP作動薬 マンジャロ (チルゼパチド)

「肥満」「肥満症」とは 

身長と体重のバランスを示す値としてBody mass index (BMI)という指標があります。
BMI (kg/m2)=体重 (kg)÷身長 (m)÷身長 (m)
BMI25以上で「肥満」となります
日本では20歳以上でBMI25以上の肥満者の割合は男性33.0%、女性22.3%にまで達しています。つまり男性は3人に1人が肥満、女性は4-5人に1人が肥満ということになります。(2019年 国民健康・栄養調査)
肥満になると糖尿病や高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症など)、高尿酸血症や睡眠時無呼吸症候群、月経異常といったさまざまな疾患を引き起こす原因となります。
日本肥満学会は「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする病態」を「肥満症」と定義しています。 

肥満症治療の基本として食事・運動・行動療法が基本となります。当たり前ではありますが食事療法とは食事量を減らす、偏食をなくす、食べ方や時間などの食事内容を見直すことから始まります。運動療法とは定期的に運動すること、になります。個々人の状態に応じて無理なく継続できる運動を行うことが大切です。
これらの生活習慣を改善してもそれでも改善しない場合には薬物療法外科的治療というのが選択肢に入ってきます。
肥満症のかたにとって体重の減量は目的ではなく手段です。肥満症治療の目的は、減量することによって糖尿病や脂質異常症、動脈硬化などの疾病を予防したり、病状を安定化させることで健康寿命を延ばしたり生活の質を下げないように維持するということになります。

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糖尿病の治療薬であるGIP/GLP1作動薬 マンジャロ(チルゼパチド)

糖尿病の治療薬は近年さまざまな新しい薬が開発されています。今回はGLP1作動薬であるマンジャロについて説明したいと思います。
GLP1作動薬には内服薬としてリベルサスというのがあります。またトルリシティやオゼンピックという注射薬もあります。いずれも作用としては食事により上昇した血糖を効果的に下げる作用があります。

マンジャロの特徴:世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬

・毎日内服しなくてもよい、週一回の皮下注射をおこなうことで効果が持続します。
・注射薬のキットは1回ごとの使い捨て操作方法は簡便で数回練習すれば容易に習得できます。注射はおなかや太ももなどの皮下に注射し、ボタンをおすと薬液は自動的に注入されます。

週一回の自己注射で、より簡便に、より効果的に血糖を安定化させることができるということが一番の特徴といえます。

マンジャロはどのように作用するのか?

通常、食事により上昇した血糖に対して反応して小腸からGLP-1およびGIPが分泌され、膵臓に運ばれます。膵臓にたどりついたGLP-1とGIPがインスリンを出すように刺激をします。インスリンが出されると血糖がさがるという流れです。(GLP-1とGIPはいずれも、もともと私たちの体の中にあるホルモンです)

マンジャロ(GLP-1/GIP作動薬)は通常のGLP-1とGIPと同様で、血糖値が高くなった時だけインスリンを出すように刺激をしますので必要以上に作用しすぎてインスリンが出過ぎるということは少ないです。

マンジャロにはおもに6種類の容量で注射キットが作られており、最小量が2.5mgで通常は2.5mgで開始します。1か月程度副作用の状況を確認して体が慣れてきたら5.0mgに切り替えて維持していくことが多いです。実際の血糖値や体調をみて効果不十分であれば7.5mg, 10mg, 12.5mg, 15mgのキットもあります。

マンジャロにはどの程度の効果が期待できるのか?

・血糖を安定化させる作用

もともと従来の2型糖尿病の治療においては、治療目標であるHbA1c(血糖の水準)の値を達成できている人というのはほぼ半分くらいしかいないというデータがあります。
今回マンジャロを使った大規模臨床試験(日本人)の結果では治療前のHbA1cが8.2程度ありましたが52週間(1年程度)の治療によって
94-99%もの人がHbA1cが7.0未満までさがり
92-97%もの人がHbA1cが6.5以下までさがりました。

・体重を減少させる作用

同じマンジャロを使った大規模臨床試験(日本人)の結果から見ますと、治療前の体重が79kg程度ありましたが

52週間(1年程度)の治療を行ったところ、マンジャロ5mgでは5.8kgの減量マンジャロ10mgでは8.5kgの減量マンジャロ15mgでは10.7kgの減量効果がありました(比較としてトルリシティでは0.5kgの減量)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35914543/

マンジャロは効果的でかつ自分で自宅で注射できる非常に簡便な薬です、重篤な副作用はほとんどありませんがいくつか注意すべき副作用があります。
①胃腸症状(頻度は高いですが軽度なことが多いです)
食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などがあります。使い始めのときや、薬の量を増やしたときに起きやすいです。
吐き気が強い場合には一回当たりの食事量を減らしましょう。揚げ物や脂質の多い食品は控えましょう。満腹になったらそれ以上は無理に食べないようにしましょう。

②低血糖(頻度はまれですが、時として重篤になるため注意しましょう)
スルホニルウレア薬、グリニド薬、インスリンなどほかの糖尿病薬を併用している場合には低血糖のリスクが上がります。
低血糖の症状:冷や汗、手足のふるえ、動悸、生あくび、頻脈、けいれん、意識消失、昏睡、異常行動

その他にアミラーゼやリパーゼなどの膵酵素の上昇(膵炎)を起こすことがまれにありますので、マンジャロを使用する場合には体調や副作用など適切にコントロールしながら行うことが大事です。

https://www.instagram.com/p/DBwLjZizupY/?igsh=bThianZpNWhlMHlh

https://www.azabujuban-clinic.jp/